2000年秋の偵察合宿報告書
天狗尾根〜鹿島槍ヶ岳
[行動予定]
11月21日 離阪
22日 JR信濃大町駅〜(タクシー)大谷原手前〜天狗尾根1900m地点
23日 T.S.〜天狗の鼻〜荒沢の頭手前
24日 T.S.〜鹿島槍ヶ岳北峰、南峰〜冷池山荘
25日 T.S.〜赤岩尾根〜下山
[報告書]
〈メンバー〉池内友宏(理4) 良知真彦(理3ワンゲル)
〈行動記録〉
22日 JR信濃大町駅5:05〜(タクシー5:50)大谷原6:00〜アラ沢出合8:00
曇り 〜1945m地点14:30
時々雪 大谷原から右岸を進む。川がせまってきたところを15m程高巻きし、橋が見えたため河原へ。
その橋から上流へは左岸からしか行けず、高巻きを数度繰り返しアラ沢出合を見つけたため河原へ
降りようとして、池内が斜面を3mほど落ち、続いて良知も落ちる。ここまで右岸への渡り道なし。
仕方なく裸足で下界用の運動靴をはいて、雄叫びを上げながら脛ほどの水深を3〜4mほど進む。
山肌を見て雪はなさそうであったが、1900m地点まで行けばあると思って、行動用の水だけ入れる。
良知は2リットルきっちり汲んでいた。
天狗尾根末端までアラ沢を200〜300m進む。赤旗が見えたがその手前から冬は雪壁になるであろう
急斜面を登る。
岩の表面に少し土をつけただけで非常に登りにくい。そこからはひたすらヤブ漕ぎ。22日と23日で
一生分のヤブ漕ぎをする。パラパラと雪が舞う。この日この雪が降らなければ、水作りができず
敗退していただろう。
14:30にようやく1,5mほどの高さの岩の下に3人用テントがぎりぎり張れるテン場を見つけて一安心する。
23日 5:00起床〜出発7:00〜12:00天狗の鼻12:30〜16:10
2370m地点
快晴 クーロアールがあるためアイゼンをつけて出発。第一クーロアールで池内がザイルなしで登るが、
登りはじめに少し岩が顔を出していたので、ザイルをぶら下げて良知にそれを手で持たせる。
その後いつでもザイルを使えるようにハーネスをはく。ヤブ漕ぎに時間を奪われ(第二クーロアール下10:00)
テン場予定地のアラ沢の頭手前は遥か遠く、今日中には無理と感じたため天狗の鼻最低コルまで行くことにする。
(ヤブ漕ぎがなくとも無理そうである。)第二クーロアールはアイゼンが効きそうなためザイルなし
で良知を先に登らせる。天狗の鼻20m下からようやく足首くらいまでの雪が現れる。
最低コルへは、尾根がなくなっていると思われるところから5m戻って左へ下る。するとカクネ里側が切れた
ヤセ尾根が小さなアップダウンをしながら続いている。良知が不安だと言いザイルを出す。2P目の5m程の
緩やかな下りが、まったく雪がついていないガラガラの岩でザイルがないと下れなかった。
15:30最低コルにつくが、2370m地点まで登り幕営。3人用テントを細く立てる。
テン場は、第一クーロアールと第二クーロアールの間、天狗の鼻に大、最低コルに中、2370m地点に中。
24日 4:30起床〜6:40出発〜小舎岩〜小岩峰〜アラ沢の頭2720m地点
快晴 出発直後、尾根を右巻きしようとトラバース気味に歩いていると後ろで声がしたため振り向いた。
すると、良知が半分しか埋まっていないピッケルの下を持って、斜面にぶら下がっているではないか!
「耐えろよ」と声をかけて、起き上がらせる。小休憩をとるが良知は妙に無口であった。歩行訓練を30分と、
ザイルをつけてピッケルストップの練習をした。私はコンテニュアスを練習したことがなかったので、
ザイルを出すときは必ずアンカーをとる。斜面が急である、片側が切れているなど恐いと感じるところでは、
ザイルをどんどん出した。
T.S.(テントサイト)から数ピッチでハンバーガー状の岩、小舎岩に出て、その上に核心の小岩峰がある。
岩場は二つに分かれていた。一つ目はザイルが上まで足りない恐れがあるので右に10mほどトラバースして
区切り、2P目を残置ザイルと木におもいっきり頼り直上する。登りきってから緩い斜面を10mほど登ると
二つ目の岩場が始まる。日当たりが良く雪のまったくついていない脆そうな岩場には、効きの弱い
ハーケンが一本あり、3m左にトラバースして左の雪面に移って左上、上に出る。14時。
一つ目の岩には木が3〜4本出ていて支点が取れる。二つ目の岩では登りきったところのカクネ里側に
残置終了点があり、懸垂下降の痕跡がある。この日、良知は水を2リットル持ち私の水を二人で飲み、
私のザックからザイルを出したため、かなりの重量差があった。そのこともあり二つ目の岩場のトラバースで、
良知は岩に噛み付いてしがみ付いたそうである。また、ここで落ちた場合のことも考えて、荷物を背負っての
「ヘッドオンによる自己脱出(二つのスリングを使って、バッチマンまたはプルージックで登る方法)」を
やっておこうと思う。
少しでも進もうと思い、風が強いのを覚悟してアラ沢の頭まで行く。そこは雪が固く、斜面であったためセルフを
とってテントに入る。テントを立て終わったときには、もうヘッドランプが必要であった。私の暖マットは銀マットで
滑りやすく、寝る時は軽くテンションがかかっていたため、あまり眠れなかった。
小舎岩から小岩峰の頭まで、テン場は多数あり。
25日 4:30起床〜出発6:55〜7:26鹿島槍ヶ岳北峰〜9:15南峰9:35
快晴 〜10:35冷池山荘11:05〜西俣出合14:00〜大谷原15:00
〜15:20ヒッチハイク〜16:30松本
その日も非常に天気がよかったがT.S.はやはり風が強く、撤収に時間がかかる。
北峰へは、雪もおおむねしまっていて、時々足首まで埋まるくらいで歩きやすく、ザイルなし。
私はいつもどおり心行くまで雄たけびをあげ、登頂を喜んだ。当初検討していた五竜への下り口を覗き見るが
大変厳しく、前向きでは下りれない。雲もなく五竜、遠見尾根、八方尾根、剱、槍ヶ岳とすばらしい
眺めを見ることができた。
北峰の下りは少し急だったのでザックなしで練習後、下り始める。稜線の西側はハイマツが頭を出し、
アイゼンをサクサク効かしながら歩く。南峰の登りは急であったが、雪と氷の間くらいの雪壁でキックステップすると
アイゼンの歯が4本入るのでザイルなしでピッケルのブレードを使って登り始める。
途中で何度か良知にザイルの必要性をたずねるが大丈夫と言ったので出さなかったが、ラスト2mというところで
恐いところがあったそうである。しかし、アンカーをとるところがない、脹脛(ふくらはぎ)も張ってきてる、
行くしかない、ということで登ったそうである。ザイルを出すべきであった。
南峰に着くと吊尾根から見えていた人間はもういなくなっており、またまた叫んで一服をする。
まだ9:30なのでがんばれば今日中に下れると思い、冷池山荘までとばして1時間。
冬は赤岩尾根へは稜線から直接行くが、今回は夏道どおりにトラバースした。
下から見た感じ、懸垂下降の可能性もある。赤岩尾根から登ってきた3パーティーと会う。
西俣の出会では、新雪が70センチ以上降ったとき雪崩れるそうであるが、今は斜面には雪もついておらず、
約1時間林道をだらだら歩いて大谷原へ。
ここでタクシーを呼ぶと、来るときに5000円かかったことから7000円は取られるということで、ヒッチハイクをする。
歩き出して20分で1台目の車が止まってくれた。若い女性が二人乗っていて、助手席の窓が開くと
いい香りが漂ってきた。むさい格好に気が引けたが、背に腹は代えられず松本まで乗せてもらう。
テン場は、T.S.から10分ほど歩いたところに2,3個所、布引山前後にも多数、冷池山荘。
文責 池内
〈感想〉
鹿島槍と富士山の間にはちょうど高い山がないらしく、天狗尾根からは今までで一番大きな富士山が
見れました。
また、はじめの二日間はヤブ漕ぎばかりで帰りたくなりましたが、後半は雪山らしくなってくれて救われました。
反省として、初日には余分に水を持っておくべきでした。良知の雪訓も滑る前にやっておくべきでした。
初めて後輩を連れて山に行って、勉強になり、楽しかったです。
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